鎖縛は可愛い。



放課後、わざわざ教室に来たセスランにサティンは丁寧に礼を言った。
サティンは現在、高校2年生である。つまり来年は受験生なわけで、サティンの希望としては薬学の方向へと進みたいと思っていた。
丁度委員会の先輩だったセスランが、薬学専攻の知り合いがいるとかで、受験で使った参考書や教材を譲ってくれることになっていたのだ。サティンにとってそれはとても有難いことだったので、極上スマイルで丁寧にお礼を言い、後日改めて謝礼をしますと約束をした。

「礼には及びませんよ。何、彼女ももう不必要なものでしたので、処分しようと思っていたようでしたし」
「いいえ、私だけじゃテキストも種類が多くてどれを選んだらいいかわからなくて。助かりました。先輩、顔広いんですねぇ」

確かそんな会話を交わしていたのだ、先刻まで。
セスランが去ると入れ違いに教室に入ってきたのは、現在絶賛お付き合い中の彼氏である鎖縛だったのだが、どういうわけか鎖縛はその時点で既に機嫌が悪かった。
むっつりと、不機嫌さがありありと顔に出ており、隠そうともしないままサティンを連れて教室を出た。

「ねえ、鎖縛ってば、どうしたのよ」
「………」

帰り道、教室に迎えに来てからずっと様子のおかしい鎖縛に、サティンはとうとう問い質した。このまま訳の分からない状態で家路を分かれるのは御免だった。基本的にうじうじと悩むのは性に合わない。人生、明るく前向きにがモットーなのである。

「鎖縛?」
「……どうせ俺はガキだよ」

顔を覗き込むサティンから目線を逸らし、ぽつりと漏らした鎖縛の言葉に、サティンは「え?」と首を傾げた。
鎖縛の眉間の縦皺が、ぎゅっと深みを増す。

「おまえ、セスランとかいうあの3年と、仲良いんだな」
「………へ、」

思わず間抜けな声を出してしまったサティンに、鎖縛は失言に気付き息を飲む。かぁっと己の失態の羞恥に顔面に血と熱が集中した。

「違…っ、今のは別に……っ!」
「ぷ」
「〜〜〜っっ!!」

噴き出し、笑いに肩を震わすサティンを鎖縛は睨むが、どんなに険しい顔も真っ赤になっていれば威嚇にもならない。
鎖縛は可愛い。
サティンは己のひとつ年下の彼氏のことを、こっそりとそう思っている。
背が高くて顔も良くて頭も良い。当然、女によくモテる。サティンと付き合う前はそれこそ取っ替え引っ替えだったらしいくらいには。(しかも長続きせず、良くて一ヶ月程度だったらしい)
クールで他人に対してどこか一線引いたような付き合いしかしない、と評された彼が、付き合ってみると意外なほど純情で不器用で、おまけにやきもち焼きで。年下なのを気にしたりして。
何て、可愛い。

「好きよ」

くすくすと笑いながら、サティンが言う。

「そんな鎖縛も好きだわ、私」

笑うサティンに毒気を抜かれたのか、鎖縛はがくりと肩を下げ脱力したが、ふうと息をつくと顔を上げ一歩、サティンへと距離を詰めた。
見上げるサティンの頬へと指を滑らせ、髪へと忍び込ませる。指が髪の中を滑り後頭部を支えると、サティンへと影が落とされた。
緩く触れ合う唇はやがて熱を持ち、角度を変える。色付くふくらみを食み、口腔へと侵入する。ん、と漏れる吐息に一旦唇を離せば、

「鎖縛のキスも、好き」

サティンが悪戯顔で言い。

「ムカつく女だな」
「お褒めに預かり光栄だわ」

そんな言い合いにお互い笑い合い、再び唇を重ねた。








可愛いひと






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ぎゃーーーーーーーーーーーー!!
(吐血、と見せかけた鼻血)
どうしましょう!?どうしたらしいですか!?
ひぶきさんからいただいちゃいました!ひぶきさんのお宅でリク解禁週間なる素敵な催しに
乗っかってこんな素敵なものをいただいちゃいました!!
懲りずに鎖サをリクした私にこのミラクルリターン!! あえてのラブ! 鎖サのラブ!
ああ、すみません、ちょっと興奮しすぎてしまいました。(鼻にティッシュをねじ込みつつ)
いやもう、素敵な作品をありがとうございました!
この鎖サラブを今後の見本にさせて頂きますvv
これからもひぶきさんの闇ラス及び鎖サ期待してますね!!

                        written by iru


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